日本遺族会が平成三十年度から厚生労働省から委託を受け実施している「戦没者遺留品の返還に伴う調査」事業でOBONソサエティから本会に照会があった遺留品について、山口県と三重県の支部遺族会で調査した結果、それぞれ遺族が判明した。
山口県では、昭和20年に硫黄島で戦死した周南市出身の角戸行夫氏の遺留品を山口県遺族連盟が調査し、甥の正則さんが田布施町に在住していることが判明した。
遺留品は、ミネソタ州在住のスティーブン・ジークさんの父親(元海軍航空隊乗務員)が戦地から持ち帰ったものを譲り受け保管していたが、OBONソサエティの活動を知り遺族の捜索を依頼していた。
10月月11日、山口県護国神社で返還式があり、市來健之助本会副会長(山口県遺族連盟会長)も出席し、遺品が正則さんに返還された。返還された遺品は健康状態や性格などが記された考課表や図面の教科書、小説など七点で、市來会長は「日章旗ではなく書類が戻ってくるのは珍しい。考課表を読むと国のために尽くしたことが推し量られる」と話した。
三重県では、昭和20年にフィリピンのルソン島で戦死した三重郡川越町(旧川越村)出身の村瀬守一氏の日章旗を三重県遺族会及び三重郡遺族会で調査し、長男の守さんが川越町に住んでいることが分かった。
日章旗はワシントンDC在住のバーナード・ホーンさんが、元米兵だった父親が戦地から持ち帰ったものを譲り受け、OBONソサエティへ返還の依頼をしていた。
10月20日、川越町戦没者追悼式で返還式が行われ、佐藤孝幸・三重県遺族会理事から伊藤勝也・川越町遺族会会長を通して守さんに日章旗が手渡された。日章旗を受け取った守さんは「この旗が帰ってくるなんて思いもよらなかった。この旗を父の魂と思って大切にお守りをします」と語った。
日本遺族会は、厚生労働省の補助事業である「戦没者遺児による慰霊友好親善事業」のフィリピン、ソロモン諸島の2地域を実施した。2地域に総勢93人の遺児が参加した。
フィリピン
宇田川剱雄本会副会長(東京都遺族連合会会長)を総括団長とするフィリピン慰霊友好親善訪問団(全国の遺児代表85人)は11月2日、東京・靖国会館に集合し結団式を行うとともに、靖国神社で旅の安全を祈願した。翌朝フィリピンへ向け出発し、マニラ到着後はそれぞれ縁の地へと向った。
A班はテレサ、タナイ、シニロアン、マリキナ、モンタルバン、ボソボソ、マニラ港(埠頭内)、マニラ市内(オーシャンパーク内)、イポで、B班はシニロアン、ボソボソ、モンタルバン、ハゴノイ、ルセナ、バタンガスで、C班はクラーク、タルラック、ボンドック道、イリサン、サンタクルズ、マシンロックで、D班はバレテ峠、バンバン、バヨンボン、オリオン峠、キャンガン、バナウエで、E班はパナイ島イロイロ方面、ナソ岬方面海岸、セブ島セブ、レイテ島オルモック港(埠頭)、カンギポット、カナンガ、パロ、ドラッグ海岸、ブラウエン旧飛行場跡で、ぞれぞれ慰霊祭を行い、亡き父へ積年の想いを存分に語りかけた。
また、友好親善事業では、各班、訪問先の小学校でサッカーボールや団員が持ち寄った学用品・衣類等を贈呈し、子供たちと交流し心を和ませた。さらに、病院を訪問し車椅子を寄贈し現地の方々との友好親善を図った。
8日、カリラヤの「比島戦没者の碑」前において全戦没者追悼式を挙行し、散華された英霊に感謝と追悼の誠を捧げた。さらに、同夜は日本国大使館代表等を招いて懇談会を開催した。所期の目的を果たした一行は、九日それぞれの想いを胸に帰国した。
ソロモン諸島
中井靖教本会評議員(奈良県遺族会会長)を団長とするソロモン諸島慰霊友好親善訪問団は、11月21日、全国6都県の遺児代表8人が東京・靖国会館に集合し結団式を行い、靖国神社で旅の安全を祈願し昇殿参拝を行った。同夜成田空港を出発し翌朝オーストラリア・ブリスベンを経由して、ソロモン諸島の首都、ガダルカナル島のホニアラに歩を印した。
23日にはマタニカウ川、コカンボナ、ママラ川で慰霊祭を行い、祭壇に故郷から持参した品々を供えて亡き父に語りかけ、午後はニュージョージア島のムンダに移動。24日朝、ホテル前で海を望んで個人慰霊祭を執り行い、亡き父たちの冥福を祈った。小型ボートを借り上げ、スコールと波しぶきの中をコロンバンガラ島方面へ。波の穏やかな海上で艦と運命を共にした父上をはじめ、ご英霊に花やお酒を手向けた。午後には激戦の地となった三角山で積年の思いを語りかけ、懇ろに弔った。
友好親善の一環として、ムンダの小学校でラグビーボールや団員が持ち寄った学用品や衣類等を寄贈、記念の植樹を行うなど明日を担う子供たちと交流を深めるとともに、ホニアラの赤十字特別支援センターでは車椅子等を寄贈し民間外交に務めた。
26日、アウステン山の戦没者慰霊碑で在ソロモン日本国大使館代表の参列のもと、全戦没者追悼式を挙行し哀悼の誠を捧げた。同夜にはセントニコラス小学校教師、児童を招いて懇談会を開催し、交流を深めるなど、所期の目的を果たした一行は、28日無事帰国の途についた。
11月24日、東京文京区の東京ガーデンパレスにおいて女性部から63人、青年部からは戦没者の孫、ひ孫、甥、姪ら61人、オブザーバーなどを含め134人が相集い、日本遺族会女性部・青年部合同研修会が開催された。
研修会は午前十時、岩村誠青年部幹事が進行し、百田節子女性部副部長の開会の辞で始まった。最初に水落敏栄会長に代わり宇田川剱雄副会長が「会を運営するには、目的をしっかり持っていただきたい。そして青年部の皆さんには、我々と一緒に会の運営の手伝いをお願いしたい」と挨拶。続いて三浦妙子女性部長、辻正人青年部長が挨拶した。
次に日本戦没者遺骨収集推進協会専務理事の竹之下和雄氏が「遺骨収集の現状等について」と題して講演し、拝聴した。
午後は女性部、青年部に分かれ、女性部は「後継者の育成」、「女性部の将来像」と題して討議がなされた。また青年部は「青年部事業 七つの柱の行動計画について」と題し、討議がなされた。
午後3時からはそれぞれの研修討議を受けての全体会議が開かれ、女性部は「青年部を育成し、女性部の将来を託せる土壌を作ることに努める」とし、今後、行動していくことが報告された。青年部からは「遺骨収集、慰霊巡拝への参加や、フェイスブックのグループ結成等、出来ることから行動に移すことが大事だ」と確認したと報告した。
研修会は、それぞれ真剣かつ、真摯な討議がなされた。
日本遺族会は、厚生労働省の補助事業である「戦没者遺児による慰霊友好親善事業」のボルネオ・マレー半島、マリアナ諸島、トラック・パラオ諸島地域を実施した。3地域に総勢39人の遺児が参加した。
日本遺族会が平成30年度から厚生労働省から委託を受け実施している「戦没者遺留品の返還に伴う調査」事業として、9月6日から10日の期間で畔上和男専務理事(他事務局一人)はアメリカのオレゴン州を訪問し、本事業の協力団体であるOBONソサエティの活動状況を確認するとともに今後の業務の進め方等について協議した。